自転車で事故に巻き込まれた! ヘルメットなしで過失割合は変わる?
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令和5年に千葉県内で発生した交通事故は1万3564件で、そのうち成田市で発生したものは412件でした。
令和5年4月1日以降、自転車に乗る際にヘルメットを着用することが努力義務化されています。自転車で走行中に交通事故に遭った場合、ヘルメットを着用していたかどうかによって、過失割合が変化する可能性があるか、心配されている方もいるでしょう。
本記事では、自転車事故の過失割合がヘルメット着用の有無によって変わるのかどうかを紹介します。また、過失割合に関する保険会社との交渉などについて、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和5年中の各月交通事故発生状況」(千葉県警察)


1、自転車で走行中のヘルメット着用は努力義務
自転車に乗るときは、ヘルメットをかぶるよう努めなければなりません(道路交通法第63条の11第1項)。
また、自転車に他人を同乗させるときは、同乗者にヘルメットをかぶらせるように努めなければなりません(同条第2項)。
上記の努力義務は、令和5年4月1日施行の改正道路交通法によって追加された内容です。改正法が施行される前は、保護責任者が児童または幼児を自転車に乗車させるときに、ヘルメットをかぶらせる努力義務を課されているのみでした。
改正法により、自転車に乗る本人がかぶることと、児童や幼児に限らない同乗者にヘルメットをかぶらせることが、新たに努力義務とされました。
「義務」とは異なり、「努力義務」には強制力や罰則がありません。自転車で走行中のヘルメット着用についての努力義務は、運転者に自主的な着用を促す観点から定められていますが、ヘルメットを着用しているかどうかで、万が一事故に巻き込まれた際の頭部へのダメージは変わります。頭部を守るためにも、自転車乗車中はヘルメットを着用すべきでしょう。
2、ヘルメットを着用せず自転車事故に遭ったら、過失割合は変わる?
交通事故の損害賠償額は、当事者の過失割合(当事者双方にどれくらいの責任があるかを示す割合)によって変化します。
たとえば、被害者側に1000万円の損害が発生したとしても、被害者側に2割の過失が認められる場合は、損害の8割に当たる800万円の損害賠償しか認められません。
自転車が巻き込まれる事故で、自転車で走行していた人がヘルメットを着用していなかった場合は、過失割合に影響するのでしょうか。こちらでは、ヘルメットの有無が過失割合に影響するかどうか解説します。
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(1)ヘルメットの着用の有無は、現状過失割合に影響しないことが多い
現時点では、一般的な自転車で走行中の人がヘルメットを着用していなくても、交通事故の過失割合には影響しないことが多いと考えられます。
ヘルメットを着用しているかどうかは、交通事故そのものの発生しやすさに、影響を及ぼすものではないため、その点についての過失は考えにくいところです。
ヘルメットの未着用が過失割合に影響するとすれば、未着用によって自転車に乗っていた人が受けた損害が拡大した場合です。実際、ヘルメットをかぶらなかったことによって頭部や頸部(けいぶ)への衝撃が大きくなり、ケガが重症化することはありえるでしょう。したがって、損害の拡大に寄与したとして過失が認められる可能性もありそうです。
しかし、自転車を運転中の児童が頭部を受傷した事故においてヘルメット不着用が問題となったケース(神戸地判平31・3・27交民52・2・427)では、事故当時ヘルメット着用が一般化していないことを踏まえ、被害者の過失とは認めない判断がなされています。 -
(2)ヘルメット着用の努力義務化は、過失割合に影響する?
令和5年4月1日から、自転車で走行するすべての人のヘルメット着用が努力義務化されました。
努力義務化については、まだまだ周知が十分でなく、実際にヘルメットを着用している方は少ない状況です。しかし、努力義務化についての周知が積極的に行われれば、今後ヘルメットの着用率が上がってくることも予想されます。
上記裁判例は、ヘルメット着用の努力義務化前のものでありますので、今後ヘルメットの着用率が上がり一般化してくれば、未着用であること自体が、自転車に乗る人の過失として考慮されることも考えられます。
お問い合わせください。
3、保険会社から提示された過失割合に納得できない場合の対処法
自転車で事故に巻き込まれた際、相手方の保険会社から提示された過失割合に納得できないこともあるかもしれません。その場合、以下の対応を行い、適正な過失割合に基づく損害賠償を請求しましょう。
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(1)事故の客観的な状況に関する証拠を確保する
交通事故の過失割合は、事故の客観的な状況に基づいて決まります。双方の主張が食い違う場合、自分に有利な過失割合を主張する本人が、主張・立証をしていくことになるため、可能な限り証拠を収集する必要があります。ドライブレコーダーの映像等の客観的な証拠が非常に重要になりますが、こういったものがない場合には、双方の意見を踏まえ、過去の裁判例を基準とする結論になることが多いです。
客観的な事故状況を把握するためには、以下のような証拠が重要となります。- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラの映像
- 警察官の実況見分調書
- 自転車の損傷状態に関する写真や報告書
- 目撃者の証言
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(2)保険会社と示談交渉をする
証拠の確保などの準備が整ったら、相手方の保険会社と改めて示談交渉を行いましょう。
事故の客観的な状況が記録された証拠や資料提示すれば、保険会社は過失割合について争っても分が悪いことを認識し、過失割合の修正に応じてくれる可能性があります。
保険会社との示談交渉を早期かつ適正な条件でまとめるためには、弁護士に依頼することも検討してみましょう。 -
(3)損害賠償請求訴訟を提起する
証拠に基づいて客観的事実を提示したにも関わらず、示談交渉において適正な内容の合意が得られない場合は、損害賠償請求訴訟を提起することも検討の一つです。
もっとも、訴訟で有利な判決を得るためには、過失割合や損害などについて、自分が主張する事実を証拠に基づいて立証しなければなりません。また、訴訟手続きは複雑で、自力で対応するのは非常に大変なため、弁護士に依頼することをおすすめします。
4、自転車で事故に巻き込まれたら弁護士に相談を
自転車で走行中に交通事故に巻き込まれてしまった際は、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、以下のようなことを行うことが可能です。
- 相手方の主張が妥当かどうか分からない場合、法的な観点からのアドバイス
- 過失割合について納得できない場合、相手方との交渉や訴訟手続き
- 弁護士基準(裁判所基準)に基づく、適正額の損害賠償請求
- 後遺障害が残った場合、後遺障害等級認定の手続きをサポート
交通事故について適正額の損害賠償を受けるためには、弁護士のサポートを受けるのが近道です。
5、まとめ
過失割合は、交通事故の当事者間で主張が食い違ってしまう可能性があります。相手方から提示された過失割合に納得できない場合は、弁護士に依頼を検討しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。自転車事故による損害について、適正額の損害賠償を受けたい方は、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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