独身のまま亡くなったら遺産は誰に? 相続の仕組みと対策を解説

2025年11月26日
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独身のまま亡くなったら遺産は誰に? 相続の仕組みと対策を解説

独身のまま亡くなった場合、財産は誰がどのように相続するのでしょうか?

国勢調査の統計によると、令和2年における45歳〜54歳の方の平均未婚率は男性28.25%、女性17.85%でした。未婚率は年々増加傾向にあり、今後もさらに増えることが予想されます。

相続の準備や財産の扱いで悩んでいる方に向けて、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説します。


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1、独身者の遺産は誰が相続するのか?

独身で配偶者や子どもがいない場合、遺産は親や兄弟姉妹などの親族が相続人となります
もし配偶者がいれば、その配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の相続人については優先順位が定められています。独身者(配偶者がいない方)が亡くなった場合の相続人は、民法で定められた以下の優先順位に従って決まります。

  1. (1)第1順位:子ども

    独身者であっても、子ども(実子・養子)がいる場合は最優先で遺産が相続されます。民法上、子どもは「第1順位の相続人」と定められているためです。

    仮に相続人となるはずの子どもがすでに亡くなっている場合は、その子ども(孫)やさらにその下の世代が相続人となります。亡くなっている相続人の子どもが代わりに相続する仕組みを、「代襲相続」といいます

    子どもがいない独身者の場合は、次に説明する第2順位の親族が相続人となります。

  2. (2)第2順位:父母(直系尊属)

    子どもや孫がいない場合、「直系尊属」と呼ばれる親や祖父母が遺産を相続します

    具体的にはまず父母が相続人となり、父母のどちらかが亡くなっている場合は、存命の方が相続人です。両親ともすでに亡くなっている場合は、祖父母が相続人となります。

    しかし、被相続人が高齢の独身者である場合、両親や祖父母がすでに亡くなっているケースもあるでしょう。この場合、相続権は第3順位に移ります。

  3. (3)第3順位:兄弟姉妹

    子どもや父母、祖父母などの直系尊属がいない場合、第3順位である兄弟姉妹が遺産を相続します。兄弟姉妹が複数人いる場合、均等に分けるのが原則です。

    相続発生時に兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、代襲相続が発生します。つまり、被相続人にとっての甥や姪が相続します。

    ただし、代襲相続が認められるのは甥・姪までであり、甥姪がすでに亡くなっている場合、甥や姪の子である「又甥(またおい)」や「又姪(まためい)」には相続権が継承されません

2、独身者に遺言書が必要な理由

被相続人が独身者である場合、遺言書の存在が重要となります。しかし、なぜ遺言書が必要とされるのでしょうか?

以下では、遺言書が必要な理由と具体的なケース、遺言で財産を渡せる相手について解説していきます。

  1. (1)「法律のルール」により自分の意思が反映されないリスクが高い

    独身者が遺言書を残さなかった場合、遺産は法律上の相続順位に従って分配されます

    遺言書は、すべての方にとって自分の財産の行方を決める重要な手段です。しかし、独身者の場合、遺言書がないことで自分の意思が反映されないリスクが高くなります

    たとえば、ご自身が望んでいなくても、疎遠な兄弟姉妹が法定相続人となり財産を承継します。また、献身的に介護してくれた親族ではない友人や内縁のパートナーなど、本当に財産を渡したい相手には、遺言書がなければ原則として一切財産を渡すことができません。

    一方、有効な遺言書を作成しておけば、親族以外に財産を渡すことも可能になり、自分の意思を確実に反映させられます。

  2. (2)法定相続人以外にも財産を渡すことができる

    遺言書では、財産を渡す相手として法律で定められた相続人以外の人物や団体も自由に指定できます。遺言で財産を渡せる相手の代表的な例は、以下のとおりです。

    • 事実婚(内縁)のパートナー
    • 友人や知人など親族以外の個人
    • 介護をしてくれた第三者
    • 法人や団体

    相続人以外に財産を渡したい相手がいる場合は、遺言書を作成しておくことが重要です

  3. (3)遺言の必要性が高いケース

    独身者にとって遺言書の必要性が高いのは、以下のようなケースです。

    • 親族と疎遠で交流がない場合
    • 兄弟姉妹と仲が悪く財産を渡したくない場合
    • お世話になった友人や介護してくれた第三者に感謝を示したい場合
    • 寄付や社会貢献に財産を役立てたい場合

    これらに該当する場合は、自身の意思を反映させるために遺言書を作成しておくことが望ましいです。
    法律で定められた相続順位は、被相続人との関係性が疎遠である、あるいは仲が悪いといった事情があっても、それだけで変更されることはありません。

    相続に関する希望がある場合は、生前に遺言書を作成しておきましょう。

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3、主な遺言書の種類と作成時の注意点

遺言書では、財産を渡す相手や遺産分割方法の指定、遺言執行者の指定など相続に関するさまざまな意思表示が可能です。

代表的な遺言書の種類には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらを選ぶ場合でも、法律上の要件を満たしていなければ無効となり、法律のルールで相続されてしまいます。

以下では、それぞれの特徴と作成時の注意点を見ていきましょう。

  1. (1)自筆証書遺言

    自筆証書遺言は、遺言書の全文・作成日・遺言者氏名を手書きし、押印して作成する遺言書です。費用がほとんどかからず、手軽に作成できるメリットがあります。

    一方で、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。

    • 書式や内容の不備によって無効となる可能性がある
    • 改ざんや紛失、発見されないなどのリスクがある
    • 開封時は家庭裁判所での検認手続きが必要(法務局の保管制度を利用しない場合)

    遺言を確実に残したい場合には、次に紹介する「公正証書遺言」を活用することをおすすめします。

  2. (2)公正証書遺言

    公正証書遺言は、公証役場で公証人に依頼して作成する遺言書です

    公証人が関与するため、複雑な遺言内容であっても形式の不備で無効となるリスクは極めて低いです。また、作成した遺言書は公証役場で保管されるため、改ざんや紛失の心配がなくなるメリットもあります。

    公正証書遺言のデメリットとして挙げられるのは、作成に手数料がかかることです。手数料の具体的な金額は、遺産額によって異なります。

  3. (3)遺言書を作成する際の注意点

    遺言書を作成する際は、以下のポイントに注意しましょう。

    • 日付・署名・押印などの法律で定められた形式を守ること
    • 信頼できる人物や弁護士などの遺言執行者を指定すること
    • 遺言内容は定期的に見直すこと

    生前にしっかりと準備しておかないと、思わぬトラブルが生じたり遺言が無効になったりするリスクがあります。遺言書の内容や形式に不安がある場合は、弁護士に相談しながら作成することが望ましいです

4、相続人がいない場合の遺産の扱いと注意点

被相続人が独身者で相続人となる親族がいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します。ただし、家庭裁判所による手続きの結果、親しい人やお世話になった人が「特別縁故者」として財産を受け取る可能性もあります。

以下では、相続人がいない場合の遺産の扱われ方と注意点を確認していきましょう。

  1. (1)相続財産清算人の選任

    被相続人の利害関係者や検察官などによる申し立てがあると、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。以前までは「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、令和5年4月の民法改正によって相続財産清算人に名称変更されました。

    相続財産清算人が選任されると、相続人を探すための公告がされます。公告から一定期間が経過しても相続人が現れない場合、債権者や受遺者に財産が分配されます。

  2. (2)特別縁故者への財産分与

    債権者や受遺者への分配後に残った財産は、「特別縁故者」に分配される可能性があります

    特別縁故者とは、相続人ではないものの、被相続人と特別な関係にあった人です。具体的には、以下のいずれかの条件を満たす人物を指します。

    • 被相続人の療養看護をしていた人
    • 被相続人と生計を同じくしていた人
    • その他特別の縁故があった人

    ただし、特別縁故者が財産を受け取るには、家庭裁判所に申し立てをして認められなければなりません。必ず認められるとは限らないため、注意が必要です

  3. (3)国庫への帰属

    債権者に対しての清算、受遺者・特別縁故者への分配が行われてもなお財産が残った場合には、相続財産は国庫に帰属します

    また、債権者・受遺者・特別縁故者に該当する人物がいない場合、すべての財産が国庫に帰属することになります。

    「親しい人に遺産を渡したい」「寄付したい」などの希望がある場合は、遺言書の作成が不可欠です。遺言書に自身の希望を明確に記しておかないと、希望どおりの相続を実現させることは難しいでしょう。

5、まとめ

ご家族がいない独身の方は、ご自身の財産の行き先について早めに意思表示をしておくことが大切です

遺言書がなければ、法律に基づく相続が行われ、疎遠の親族が遺産を承継する可能性があります。また、相続人がいない場合には、遺産は最終的に国庫に帰属します。

こうしたトラブルや意思の不反映を防ぐには、法的に有効な遺言書を作成することが確実な方法です。

遺言書の作成や生前の財産整理に不安がある場合は、弁護士への相談を検討しましょう。ベリーベスト法律事務所の弁護士であれば、必要に応じて司法書士と連携しながらサポートできます

安心して相続準備を進めたい方は、ぜひベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています