MDMAの所持や使用の容疑で身内が逮捕されたら家族はどう対応すべきか

2024年10月09日
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MDMAの所持や使用の容疑で身内が逮捕されたら家族はどう対応すべきか

MDMAとは、特に若者の間で乱用が広がっている違法薬物のひとつで、「エクスタシー」「バツ・ペケ(×)」「タマ」などの隠語で呼ばれています。

こうした薬物のほとんどは海外から持ち込まれていますが、成田国際空港にある成田税関支署の発表によると、違法薬物の密輸事犯の摘発件数が、2023年の前年比(上半期)で約2.6倍も増加しているとのことです。

もし家族など身近な方がMDMAの所持や使用で逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士に依頼し、更生のために家族や周囲のサポートを行う必要があります。

本コラムでは、MDMAの特徴や危険性、所持や使用した場合の罰則、弁護士や家族の役割、手続の流れについて、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説します。


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1、MDMAの所持や使用は取り締まりの対象

MDMAとはどのような薬物なのか、所持や使用した場合の罰則について解説します。

  1. (1)MDMAとはどんな薬物?

    MDMAは合成麻薬の一種で、化学名を「メチレンジオキシメタンフェタミン」といいます。
    覚醒剤に類似した化学構造を持っており、違法薬物としての取り締まりを逃れるために開発されたともいわれています。

    MDMAはカラフルな錠剤に加工されて流通していることが多く、見た目のカジュアルさから危険性を十分に認識せずに使用してしまうケースが見られます。

    しかし、MDMAは覚醒剤と同様に中枢神経系に作用し、強い興奮作用と幻覚作用を引き起こす危険な薬物です。使用により精神錯乱や睡眠障害を引き起こすほか、急性中毒による死亡例も発生しています。

    また、MDMAは精神依存性が高く、一度使用すると脳が薬物の効果を求めるようになり、自力でやめることが非常に困難になってしまいます。さらに、より強い薬効を求めて覚醒剤など他の薬物に手を出すケースもあることから、MDMAは「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれています。

  2. (2)MDMAを所持・使用した場合の罰則

    MDMAは「麻薬及び向精神薬取締法」により麻薬として指定されており、所持や使用のほか、譲渡、譲受、製造、輸入などの行為に対して罰則が規定されています

    ここでは、MDMAを所持または使用した罪の成立要件や罰則について解説します。

    ① 所持
    MDMAをみだりに所持した場合は「7年以下の懲役」に処せられます

    「みだりに」とは、法律上処罰の対象外ではないことを意味し、厚生労働大臣や都道府県知事から免許を受けた麻薬取扱者などではないということです。他人から頼まれて預かっていた場合でも、それがMDMAを含む身体に有害で違法な薬物であるとの認識があれば、所持罪が成立します。

    ② 使用
    MDMAであることを認識して体内に摂取した場合は「7年以下の懲役」に処せられます

    MDMAが混入した飲み物を知らずに飲んだような場合は、故意がないため罪には問われません。しかし、MDMAと明確に認識していなくても、「MDMAなどの違法ドラッグかもしれない」と思って口にした場合は、故意があったと認定されます。

    MDMAのような違法薬物が知らないうちに体内に摂取されることは通常では考えにくいため、合理的な説明ができなければ、自分の意思でMDMAを摂取したと認定される可能性が高いでしょう。

    なお、MDMAを所持して逮捕され、さらに尿検査でMDMAが検出されたようなケースでは、所持罪と使用罪の両方が成立します。また、売買など営利目的でMDMAを所持・使用した場合の罰則は、「1年以上10年以下の懲役(さらに300万円以下の罰金が併科される可能性あり)」と格段に重くなります。

2、逮捕されたら弁護士をつけるべき理由

MDMAの所持や使用により逮捕された場合、できるだけ早く弁護士のサポートを受けることをおすすめします

早期に弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。

  1. (1)無実であれば不起訴処分や無罪判決を目指す

    他人から預かった物や口にした物の中にMDMAが含まれていることを知らなかった場合は、故意がないため罪に問われることはありません。

    しかし、取り調べでそのように弁解しても、捜査官には取り合ってもらえないばかりか、逆に罪が成立する方向で供述を誘導されるリスクが高いのが実情です。

    特に、MDMAであると認識していたかが争点になる場合、取り調べでの供述が重要な証拠となるため、取り調べも厳しくなりがちです。

    そのため、逮捕された直後から弁護士に相談し、取り調べに対するアドバイスを受けることがより重要といえます。不用意な供述をしてしまう前に、弁護士のサポートを受けることで、検察官が起訴を見送ったり、刑事裁判で無罪判決を得られたりする可能性が高くなります。

  2. (2)早期の釈放を目指す

    MDMAなどの薬物事件で逮捕されると、以下の理由から、なかなか釈放してもらえないケースが多くなります。

    • 薬物の入手先や一緒に薬物を使っていた共犯者と口裏を合わせて証拠隠滅を図る可能性がある
    • 再び薬物に手を出したり、自暴自棄になって逃亡したりするリスクがある


    このような状況で早期の釈放を目指すには、再び薬物に手を出さないような環境を整備することが特に重要です。

    たとえば、家族など身近な人が本人を監督して、売人がいるような場所に近づかないようにすることや、薬物依存症の治療に取り組むことなどが挙げられます。

    薬物事件の弁護経験がある弁護士は、専門的な視点から、本人の社会復帰に向けた環境整備をサポートすることができます。このサポートにより、身柄拘束の必要性が低くなり、保釈などによる早期の釈放が認められる可能性が高まります。

  3. (3)医療機関や自助団体へつなげることができる

    MDMAなどの薬物は、脳の中枢神経に作用することで薬物依存症を引き起こし、本人の意志だけでは完全に断ち切ることが難しいとされています。

    弁護士の役割は、刑事手続で重い処分や刑を避けるための弁護活動だけではありません。
    刑事手続が終わった後、よりよい人生を送っていただくために、薬物依存の治療や自助団体への参加につなげることも、弁護士の重要な役割の一つです。

    自助団体とは、依存症の克服を目指す人々が自主的に集まり、ミーティングなどのプログラムを通じて経験を共有し、相互に助け合うことを目的とした団体で、家族を対象とした家族会もあります。

    本人やご家族など周囲の方は、世間体などを気にして専門家の助けを嫌がることがあるかもしれませんが、薬物犯罪を繰り返して逮捕されてしまっては意味がありません。
    薬物事件は再犯率が高いのが特徴ですが、医療的なケアを受けたり、自助団体に参加したりしながら普通の生活を送っている人も大勢います。

    薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士は、医療機関や、自助団体、家族会を紹介することも可能です。

3、逮捕後の手続の流れ

MDMAで逮捕された場合を例にして、刑事手続はどのように進むのか解説します。

  1. (1)逮捕・勾留

    MDMAの所持や使用を警察に疑われた場合、通常、以下のような流れになります。

    • MDMAの錠剤や尿の提出を求められる
    • 鑑定の結果、MDMAが検出されると、逮捕される
    • 逮捕後、警察の留置場に収容され、取り調べを受ける
    • 検察官がさらに身柄拘束の必要があると判断した場合は勾留請求される
    • 裁判官が勾留を認めると、身柄拘束を受けたまま取り調べを受ける


    身柄拘束の期間は、逮捕されてから勾留請求までが最大72時間、勾留されると最大20日間です。

    なお、弁護士以外の家族などが面会や差し入れをできるのは、勾留されることが決まってから(面会等を制限する決定がされない場合)になります。

  2. (2)起訴・不起訴

    勾留の満期日までに、検察官は被疑者を起訴して裁判所に処罰を求めるか、不起訴処分として手続を終了させるかを判断します。

    MDMAの所持や使用の場合は、客観的な証拠として鑑定書があることから、起訴される可能性が高くなります。

  3. (3)刑事裁判

    MDMAの所持や使用は、いずれも「7年以下の懲役」に当たる罪なので、起訴されると地方裁判所で審理されることになります。

    勾留された状態で起訴された場合、判決が言い渡されるまで勾留が続きます。

    なお、起訴された後、裁判所に保釈請求を行うことが可能になり、保釈が許可されると保釈保証金を納付することで釈放されます。保釈が許可されるためには、家族などが身元引受人となって本人を監督することが最低限の条件になるのが一般的です。

  4. (4)判決

    MDMAの所持や使用で起訴され、事実を認めて争わない場合、通常、起訴から2か月から3か月後に判決が言い渡されます。

    過去に刑事裁判などで刑に処せられた前科がなく、営利目的がなければ、執行猶予つきの判決となる可能性もあるでしょう。

    一方、前科がある場合は、前科の時期にもよりますが、実刑判決や一部執行猶予判決となる可能性もあり、同種の薬物事件の前科があると刑が重くなる傾向があります。

4、家族などがMDMAで逮捕された際にできること

身近な方が薬物事件で逮捕されるという状況に直面すると、気持ちの整理がつかないことがあるかもしれません。

しかし、本人の更生や薬物依存の克服のために、以下の点に留意してください。

  1. (1)弁護士との相談

    MDMAの所持や使用で逮捕されてしまった場合、まずは薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士のサポートを受けることが重要です。

    しかし、逮捕された本人は不慣れな環境に置かれる上に、薬物の影響で正常な判断ができない可能性があります。

    そのため、ご家族など身近な方が弁護士に依頼して、逮捕直後から弁護士が本人に面会し、取り調べに対するアドバイスなど必要なサポートを行うのが理想です。弁護士への依頼は、まず家族などからの依頼で弁護士が本人に面会し、本人が了解すれば正式に弁護を引き受けるという手順で進めることもできます。

  2. (2)薬物依存への理解と社会復帰のサポート

    薬物依存症は、本人の意志の力だけでは克服が難しい病気ですが、本人は「二度と薬物は使わない」と口では約束しても、病気であるという自覚がないことも少なくありません。

    そのため、薬物依存を克服するためには、家族など周囲の理解とサポートが不可欠です。特にMDMAは比較的入手が容易な薬物であり、再使用のリスクが高いため、本人が釈放されたらすぐに医療的ケアや自助団体につなげることが理想的です。

    そのためには、本人が身柄拘束されている期間中から、周囲の方が社会復帰の準備をしておくことも重要といえます。

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5、まとめ

MDMAは覚醒剤と似た化学構造を持つことから、法律上麻薬と指定されており、所持や使用した場合は処罰の対象となります。

家族など身近な方がMDMAに関与して逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士のサポートを受けるとともに、医療的ケアなど社会復帰に向けた準備を行うことが重要です。

ベリーベスト法律事務所では、薬物事件など刑事事件に関するご相談を承っております。
ご自身やご家族などが逮捕されてしまったら、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています