ATMに置き忘れた現金を持ち帰ると窃盗? 逮捕される可能性や対処法

2026年01月05日
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ATMに置き忘れた現金を持ち帰ると窃盗? 逮捕される可能性や対処法

前の利用者がATMに現金を置き忘れていた場合、持ち帰ると窃盗罪になるのでしょうか?

実際、令和3年にコンビニATMに置かれていた5000円を持ち帰った税関職員が、窃盗容疑で逮捕されました。ATMには防犯カメラが設置されており、利用履歴なども残るため被疑者が特定されやすい傾向にあります。

ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説します。


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1、ATMに置き忘れた現金を持ち帰ったら何罪になる?

ATMに置き忘れられた現金を持ち帰る行為は、「窃盗罪」または「占有離脱物横領罪」に該当する可能性があります。どちらの罪にあたるかは現場の状況や金額などによって異なりますが、いずれにしても刑事罰の対象となる行為です

それぞれどのような犯罪なのか、またどのような刑事罰が下されるのかについて、以下で具体的に解説していきます。

  1. (1)窃盗罪

    窃盗罪は、他人の財物を自分のものにするために盗む行為を罰する犯罪です。ATMに置き忘れられた現金についても、元の持ち主が「占有」しているとみなされれば、その現金を持ち去る行為は原則として窃盗罪に該当します。

    ここでいう占有とは、財物に対する事実上の支配・管理が継続している状態です。元の持ち主が置き忘れてからあまり時間が経過しておらず、まだ近くにいるような状況であれば占有が継続していると評価されやすいでしょう。

    仮に、元の持ち主の占有が及ばないと判断される場合でも、ATMは銀行が管理・監視する空間であるため、置き忘れられた現金は直ちに銀行の占有下に入ると評価されるのが一般的です。いずれにしても、「他人の占有する財物」であることに変わりはありません。

    さらに、窃盗罪が成立するには「不法領得の意思」、すなわち現金について、権利者を排除して自分の物として利用・処分しようとする意思が必要です

    たとえば、見つけた現金を生活費に充てるつもりで持ち帰ればこの意思が認められますが、誤って持ち帰った直後にすぐ返す意思があれば、不法領得の意思が欠けると考えられる余地があります。

    また、窃盗罪が成立するためには、実際に現金を持ち主や管理者の意思に反して自分の支配下に移す行為、すなわち「窃取」の事実が必要です

    こっそり取った場合だけでなく、堂々と持ち去った場合でも、相手の承諾なく占有を奪った事実があれば窃盗にあたります。

    このように、ATMに置き忘れられた現金を「自分のものにしよう」として持ち去る行為は、占有・不法領得の意思・窃取の要件を満たしやすく、窃盗罪として立件される可能性が高いといえます。窃盗罪に該当した場合の法定刑は、10年以下の拘禁または50万円以下の罰金です

  2. (2)占有離脱物横領罪

    占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)は、他者の占有から離れたものを無断で自分のものにする行為を罰する犯罪です。ATMに置き忘れられた現金がすでに持ち主の占有から離れ、誰の管理下にもないと判断された場合に該当する可能性があります。

    占有離脱物横領罪は、「遺失物」などを「横領すること」で成立します。

    遺失物とは、占有者の意思に反してその支配を離れ、誰にも占有されていない物のことです。典型例はいわゆる落とし物です。ATMの現金も、置き忘れてから相当の時間が経過し、持ち主や銀行の占有が及ばないと評価されれば「遺失物」として扱われる可能性があります。

    ここで重要なのは、窃盗罪との違いです。窃盗罪は「他人の占有する財物」を盗む行為を処罰するのに対し、占有離脱物横領罪は「すでに誰の占有にも属していない財物」を対象としています。

    つまり、ATMに置き忘れられた現金がまだ持ち主や銀行の「占有下」にあると考えられる場合は窃盗罪が成立し、占有が完全に失われていると評価される場合には占有離脱物横領罪となるのです。

    「横領」とは、不法領得の意思、すなわち権利者を排除して自分の物として利用・処分しようとする意思に基づく行為です。ATMに置き忘れられた現金を、「誰の物かわからないから自分が使ってよい」と考えて持ち帰ると、不法領得の意思があると判断されやすくなります。

    占有離脱物横領罪に該当した場合の法定刑は、1年以下の拘禁または10万円以下の罰金、または科料です。窃盗罪と比べると軽い刑罰ではありますが、刑事責任を問われる点に変わりはなく、安易に「忘れ物だから大丈夫」と考えて持ち去ると重大なトラブルにつながる可能性があります。

2、ATMの置き忘れを持ち去って逮捕される可能性は?

ATMにある現金を「忘れ物を拾ったつもり」で持ち帰ったとしても、その行為は窃盗罪(または占有離脱物横領罪)として扱われる可能性があります

とくにATMは銀行が管理する空間であり、置き忘れられた現金も速やかに銀行の占有下に入ると評価されることから、実務上は窃盗罪として立件されるケースが大半です。

また、ATMには防犯カメラが設置され、現金の出入りも明確に記録されているため、被疑者が特定されやすい環境でもあります。

では、実際に警察が介入し、逮捕に至るのはどのようなケースなのでしょうか。警察が動く可能性が高いケースと逮捕の判断基準について、以下で解説します。

  1. (1)実際に警察が動く可能性のあるケース

    警察が捜査を開始するかどうかは、被害届が出されるかどうかが大きなポイントです

    被害届を出す可能性があるのは、ATMに現金を置き忘れた人、もしくはATMを設置している銀行です。

    ATMには基本的に監視カメラが設置されているため、犯行の瞬間が記録されるケースも多くあります。警察に通報されれば、状況によってはすぐに捜査が開始されるでしょう。

  2. (2)逮捕されるかどうかの判断基準

    ATMに置き忘れられた現金を持ち帰ったからといって、即座に逮捕が決まるわけではありません。警察は以下の要素を総合的に判断して、逮捕の必要性を検討します。

    • 行為の悪質性や持ち去られた金額
    • 犯罪行為をした客観的な証拠があるかどうか
    • 被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうか


    たとえば、多額の現金を持ち去ったり、警察からの連絡を無視したりする行為があれば、逮捕される可能性は高まるでしょう

    逮捕されなかったとしても、不起訴処分とならない限りは在宅事件として自宅にいながら捜査を受けることになります。

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3、警察に呼び出された場合の対応方法

ATMでの現金の持ち去りについて、後日警察から呼び出しを受けた場合は、まず落ち着いて冷静に対応することが重要です。呼び出しに対して適切に対応できなければ、その後の処分に大きな影響を与えるおそれがあります。

以下では、取り調べにおける注意点や弁護士を同行させるメリット、呼び出しに応じないリスクについて確認していきましょう。

  1. (1)取り調べにおける否認・自白のリスク

    否認や自白にはそれぞれリスクがあるため、呼び出し後の取り調べでは慎重に言葉を選んで対応する必要があります。

    警察による取り調べでは、供述調書が作成されます。供述調書は、後の処分や裁判の判断材料となる重要な書類です。

    しかし、緊張や焦りから自分に不利な発言や事実と異なる発言をしてしまい、供述調書に記録される可能性があります。

    たとえば、否認した場合は、証拠との食い違いがあると「嘘をついた」と不利に評価されるリスクがあります。一方で、本来争える余地があるにもかかわらず自白すると、有罪の方向で手続きが進んでしまう危険もあるのです。

    不利な状況になるリスクを防ぐためにも、取り調べを受ける前に弁護士への相談を検討しましょう

  2. (2)弁護士を同行させるメリット

    警察から呼び出しを受けた際は、弁護士に相談することで同行を依頼できます。弁護士を警察に同行させる主なメリットは、以下のとおりです。

    • 供述内容を整理できる
    • 不利な発言を避けられる
    • 急な逮捕を回避できる可能性がある


    取調べ室への同席は原則として認められませんが、弁護士がすぐ近くに控えていることで、精神的な支えとなり、不当な取調べに対する牽制にもなります。ATMに置き忘れられた現金の持ち去りで警察に呼び出された際は、早めに弁護士に相談しましょう。

  3. (3)警察の呼び出しに応じない場合のデメリット

    警察からの呼び出しは原則として「任意」であり、強制力はありません。しかし、正当な理由なく呼び出しに応じない場合、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕されるリスクが高まります。

    また、呼び出しを無視し続けると、家宅捜索や長期間の身柄拘束といった強制捜査に発展する可能性もあるでしょう。

    逮捕や家宅捜索の手続きが進められると、社会的信用や日常生活に大きな支障をきたすおそれがあります。警察の取り調べや逮捕に不安がある場合は、早期に弁護士へ相談することをおすすめします

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4、ATMの窃盗で逮捕されたら│弁護士の3つのサポート

ATMの現金窃盗容疑で逮捕されてしまった場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することで、以下のようなサポートを受けられます。

  1. (1)取り調べに対するアドバイス

    弁護士は、警察からの取り調べに対してどのように対応すべきかアドバイスします。

    逮捕後の取り調べでは、受け答えの内容が非常に重要です。供述が曖昧だったり、不用意に認めてしまったりすると、事実以上に悪質と受け取られてしまう可能性があります。

    弁護士は、取り調べ前にアドバイスを行い、注意すべきポイントを具体的に説明します。黙秘権の行使や否定の方法など、状況に応じた対応方法がわかれば、不利な供述を避けやすくなるでしょう。

  2. (2)被害者との示談交渉

    弁護士は、被害者との示談交渉が可能です。

    ATMに置き忘れられていた現金を持ち帰った場合、前のATM利用者だけでなく、銀行が被害者となる場合もあります。自身で直接被害者と話し合って示談を成立させることは、困難なケースも多いでしょう。

    弁護士は、依頼人に代わって被害者と連絡を取り、示談成立に向けた話し合いを進めます。示談を成立させることによって、早期の釈放や不起訴処分につながる可能性が高くなります。

  3. (3)不起訴処分獲得に向けた弁護活動

    弁護士は、不起訴処分獲得に向けた弁護活動が可能です。

    具体的には、事件の内容や被疑者の反省状況・示談の有無・前科の有無などをもとに、意見書を提出するなどの弁護活動をします。

    不起訴処分になれば刑事裁判にかけられないため、前科もつきません。前科がつくのを回避したい場合や、重い刑事処分を避けたい場合には、逮捕後できるだけ早く弁護士へ相談するのが望ましいです

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5、まとめ

ATMに置き忘れられた現金を持ち帰ることは、軽い気持ちであったとしても重い罪に問われる可能性のある行為です。

とくにATMのような公共性の高い場所では、元の所有者または銀行の占有が認められる場合が多く、窃盗罪として処罰されやすい傾向にあります。

ATMから現金を持ち帰ってしまった場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。弁護士に相談することで警察に対して適切に対応できるようになり、処分の軽減が期待できます。

警察からの呼び出しや逮捕への不安を感じた際には、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています