家庭内別居で離婚するまでの期間はどれくらい必要? 離婚の流れを解説
- 離婚
- 家庭内別居
- 離婚までの期間

DVや夫婦間の不和、家庭内別居などに関する相談を受け付けている、千葉県の女性サポートセンターに寄せられた令和5年度の相談件数は、合計で1万1392件にのぼります。
このような相談の中でも、「家庭内別居」の状態が長く続いているケースでは、他人からは問題ないように見えても、夫婦関係が冷え切っていて、離婚を検討すべき段階に至っているかもしれません。ただし家庭内別居の事実だけでは、法的に強制的な離婚を成立させることは困難です。このような状況で離婚を考える場合は、弁護士に相談しながら適切な対応を検討しましょう。
本記事では、家庭内別居を理由に離婚を考えている方が知っておくべきことを、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説します。


1、家庭内別居を理由に離婚できるのか?
夫婦が同じ家に住んでいても、日常的な会話がなく、食事も別々という「家庭内別居」。このつらい状況を理由に離婚することはできるのでしょうか。家庭内別居は法的に離婚の理由になり得るのかどうか、離婚することが可能な場合についてご説明します。
-
(1)家庭内別居とは
家庭内別居とは、夫婦が同居しているものの、共同生活の実態がなく、まるで別居しているかのように別々に生活している状態をいいます。夫婦関係が極端に悪化した結果、家庭内別居に至ってしまうケースが多いです。
たとえば以下のような状態にある場合は、家庭内別居の可能性があります。- 夫婦間で会話がほとんどない
- 一緒に食事をとることがほとんどない
- 相手の分の料理を作らない
- キッチン、リビングの使用時間をずらして顔を合わせないようにしている
- 生活費を分担せず、それぞれが自分の生活費を負担している
- 夫婦としての営みがない
-
(2)夫婦が合意すれば、理由を問わず離婚できる
夫婦間で合意が得られれば、理由を問わず離婚することができます。家庭内別居を理由とする離婚も可能です。
直接の話し合いによって離婚の合意が得られたときは、市区町村役場に離婚届を提出しましょう。離婚届が受理された時点で、離婚が成立します。
親権や財産分与などでもめて、離婚の話し合いがまとまらないときは、離婚調停を申し立てて、家庭裁判所で話し合うことも考えられます。調停において離婚の合意が得られた場合は、調停離婚が成立します。 -
(3)家庭内別居だけでは、強制的に離婚するのは難しい
離婚調停においても夫婦間で離婚の合意が得られないときは、離婚訴訟を起こして強制的に離婚を目指すことになります。
ただし、離婚訴訟で強制的に離婚を成立させるためには、以下のいずれかの法定離婚事由に当てはまることを立証しなければなりません(民法第770条第1項各号)。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明である
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
家庭内別居は、その状態が極めて深刻で、夫婦関係が破綻していると認められれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する余地があります。しかし、同居を継続している状態では、夫婦関係が完全に破綻しているとは認定されにくく、実際に訴訟で離婚が認められるケースは非常にまれです。
離婚訴訟で強制的に離婚を成立させたいなら、完全に別居を始めるか、他方配偶者の不貞行為の存在など別の法定離婚事由を主張するなどの対応が必要になります。 -
(4)完全別居の場合は、おおむね3~5年以上の別居期間が必要
完全別居(夫婦別々の家に居住)の場合は、おおむね3~5年以上の別居で夫婦関係の破綻が認められる可能性が高まるとされています。もっとも実際には、夫婦関係が完全に破綻しているかどうかは、総合的な観点から判断されるので、別居期間だけで判断することは難しいです。
別居期間が短くても、相手の不倫やDVなど明確な離婚原因がある場合は、別居の期間に関係なく離婚が認められることがあります。そのような証拠がある場合は集めておくといいでしょう。
ただし、自分が不貞行為などをして離婚原因を作った場合(=有責配偶者)、離婚訴訟における離婚は、なかなか認められません。離婚訴訟で離婚が認められるとしても、非常に長い別居期間等の事情が必要になる傾向にあるのでご注意ください。
2、家庭内別居で離婚する際に決めるべき事項
家庭内別居状態から離婚へ進む場合、夫婦間で慎重に検討し、合意を形成すべき多くの重要事項があります。特に、財産や将来の生活設計に関わる取り決めは、その後の人生に大きな影響があるでしょう。
ここでは、円滑な離婚手続きのために、必ず話し合っておくべき事項について解説します。
-
(1)財産分与
夫婦が離婚する際には、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた共有財産を公平に分ける「財産分与」を行うことができます(民法第768条、第771条)。
いずれかが単独名義で所有している財産でも、婚姻中に取得したものは原則として財産分与の対象です。
財産分与の内容や割合は、半分ずつを基本として、まずは夫婦間で話し合って決めることが多いです。公正に財産分与を行うためには、相手が所有している財産を漏れなく把握することがポイントです。また、離婚成立から2年が経過すると、請求権自体が消滅するため注意が必要です。 -
(2)年金分割
婚姻中において、夫婦のいずれかが厚生年金保険へ加入していた場合は、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を公平に分ける「年金分割」を請求できます。
年金分割の方法には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。① 合意分割:夫婦の合意または裁判手続きによって、年金分割の割合を決めます。
② 3号分割:国民年金の第3号被保険者だったことがある方(専業主婦など)が、単独で年金分割を請求できます。3号分割の場合、第3号被保険者であった期間についてのみ自動的に半分ずつ年金が分割されます。
合意分割を行う場合は、夫婦間の話し合いなどが必要です。基本的には半分ずつに分けるのが公平と思われますが、他の離婚条件とのバランスを考慮した上で話し合って決めましょう。また、年金分割の請求期限は離婚から2年以内となります。先延ばしにせず、離婚の際にしっかり決めておくことが大切です。
参考:「離婚時の年金分割」(日本年金機構) -
(3)慰謝料
相手が離婚の原因を作った場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。
家庭内別居だけでは慰謝料の請求は難しいですが、たとえば以下のような事情があれば、相手に対して慰謝料を請求可能です。- 不貞行為
- DV(暴力)
- モラハラ
- 正当な理由のない生活費の分担拒否
慰謝料の適正額は50万円から300万円程度の範囲内で、具体的な事情に応じて決まります。弁護士のサポートを受けながら、適正額の慰謝料を請求しましょう。
-
(4)親権
夫婦間に18歳未満の子どもがいる場合は、離婚時に父母のいずれかを親権者と定める必要があります。
離婚後の親権者を決める際には、子どもの利益を最も優先して考慮しなければなりません(民法第766条第1項)。親のエゴではなく、子どもにとってどちらと一緒に暮らすのが幸せかを重視して、親権者を決定しましょう。 -
(5)養育費
離婚後に子どもと一緒に暮らす場合は、相手に対して養育費を請求できます。
毎月の養育費の額を決める際には、裁判所が公表している「養育費算定表」が参考になります。ただし、養育費算定表に基づく金額は目安にすぎないので、家庭の事情を反映した上で適正な養育費の額を取り決めましょう。
ベリーベスト法律事務所では養育費を簡単に計算できる、養育費計算ツールをご用意しています。 -
(6)面会交流
離婚後に子どもと一緒に暮らさない親も、定期的に子どもと会って交流することが望ましいです。
離婚に当たっては、面会交流に関して以下のような事項を取り決めることもあります。- 面会交流の頻度、方法
- 子どもとの連絡に関するルール
- プレゼントに関するルール
- 宿泊の可否
3、家庭内別居を理由に離婚する場合の流れ
家庭内別居の状態から一歩を踏み出して離婚を考えはじめても、具体的に何をすればよいのか迷われる方は多いのではないでしょうか。
ここでは、家庭内別居から離婚に向けて、準備すべきことや手続きの進め方について、段階を追って詳しく解説していきます。
-
(1)離婚したい旨を相手に伝える
まずは、離婚したい旨を相手に伝えましょう。話し合いをスムーズに進めるためには、感情的にならず、冷静な言葉で離婚の意思を伝えることが大切です。
-
(2)相手が離婚に同意しない場合は、完全別居を開始する
相手が離婚に同意しないときは、完全別居を始めることも選択肢の1つです。自分がいない生活に慣れた相手が離婚に応じるケースがあるほか、別居期間が長引けば訴訟で離婚が認められる可能性も高まります。
ただし、正当な理由なく相手の同意を得ずに別居すると、同居義務違反と判断されて離婚請求が認められなくなる可能性があるので注意が必要です。
なお、別居期間中も離婚が成立するまでは、相手に対して婚姻費用の分担を請求できます(民法第760条)。相手が婚姻費用の分担を拒否する場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用しましょう。
参考:「婚姻費用の分担請求調停」(裁判所) -
(3)離婚調停を申し立てる
夫婦間の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。調停委員が中立的な立場から双方の意見を聞き、離婚条件についての話し合いをサポートしてくれます。
離婚調停を有利に進めるためには、自分の置かれている状況や要望を調停委員に対して明確に説明することが重要です。必要に応じて弁護士に相談し、主張を裏付ける資料の準備など、適切な対応を心がけましょう。 -
(4)離婚訴訟を起こす
離婚調停が不成立となり、引き続き離婚を希望する場合は、離婚訴訟を起こすことになります。
訴訟では、裁判所の判断によって離婚の成否が決められます。
ただし前述のとおり、訴訟で離婚が認められるためには、法定離婚事由の立証が必要です。家庭内別居だけでは不十分なケースが多いので、婚姻関係が破綻に至った具体的な事情について、証拠を整えて主張しましょう。
4、家庭内別居で離婚を考えている方は弁護士に相談を
家庭内別居を理由に離婚したいと考えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。
離婚について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
- 相手と話し合いができない状態でも、離婚を成立させるための具体的な方法を示してもらえる
- 訴訟で強制的に離婚を成立させられるかどうかを、法的な観点から検討してもらえる
- 相手との交渉や裁判手続きへの対応を一任できる
- 適正な条件で早期に離婚が成立する可能性が高まる
- 精神的・身体的な負担を軽減できる
このように、弁護士への相談は、より良い解決への第一歩となります。家庭内別居の状況でお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずは弁護士に相談してみましょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
家庭内別居の期間にかかわらず、夫婦間で合意すれば離婚できます。合意が得られない場合は、離婚手続きの進め方について工夫が必要なので、弁護士に相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。家庭内別居につらさを感じて離婚したいと考えている方は、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|