離婚前の別居時・別居後│財産分与の対象範囲は? 分け方と注意点
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千葉県が公表した統計によると、2022年度の成田市の離婚数は226件で人口1000人に対して1.81%の割合でした。これは直近5年の中で2番目に高い数値になります。
現在別居中で、これから離婚の話を進めようと考えている方の中には、別居時の財産と、別居後に購入したものは財産分与の対象となるのか知りたいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、別居のタイミングによって財産分与の対象となる財産や、財産分与の評価基準、手続きの注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説していきます。
1、別居時の財産は財産分与に含まれるの?
まずは、そもそも財産分与とは何か、別居のタイミングによって分与の対象はどう変わるのか確認しておきましょう。
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(1)財産分与とは?
財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して築いた財産を、離婚に際して分け合うことです。
民法には、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定されています(民法第768条1項)。これを離婚における財産分与請求といいます。
財産分与の割合については、原則として「2分の1」とされています。夫婦の一方の名義になっている財産であっても、夫婦の協力によって形成されたと評価できるものは、公平に分けることになります。
たとえば、夫婦の一方が専業主婦・専業主夫であったとしても、財産分与を請求する権利はあります。専業主婦(主夫)は会社に勤務して給料を得ていませんが、家庭で家事労働に貢献することで、財産を協力して築いていると評価できるからです。したがって、専業主婦(主夫)についても、財産分与を請求することができるのです。 -
(2)別居時の財産は分与対象となる
財産分与の対象となる財産は、原則として「別居(した)時点」を基準に判断されます。
前述のとおり、財産分与の目的は、夫婦の協力によって築いた財産を清算することにあります。そのため、夫婦が「同居」して生活している期間についてはお互いの協力のもとで夫婦の共有財産が形成・維持されていると考えられます。
しかし、夫婦が「別居」して生活するようになると、夫婦間の協力関係も終了することになり、それ以降に形成された財産は夫婦共有財産とは考えられなくなるのです。
したがって、別居後に取得した財産は、原則として財産分与の対象とならないことになります。
2、財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は、婚姻中に形成された夫婦の共有財産です。ここでは、夫婦の共有財産として財産分与の対象となる代表的な財産について解説していきます。
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(1)土地や建物などの不動産
夫婦の婚姻中に購入した土地や建物などの不動産については、財産分与の対象となります。
たとえ、夫の単独名義で登記されていたとしても夫婦共有財産として財産分与の対象です。購入した住宅の分け方としては、自宅を売却して得たお金を分与したり、一方が住み続けて他方に対し、査定額から住宅ローン等を控除した金額を分与する方法などがあります。 -
(2)現金、預貯金、株式や投資信託などの有価証券
夫婦の婚姻中に蓄えた現金や預貯金についても財産分与の対象となります。
誰が稼いだお金か、誰の名義で保有していたかということにかかわらず、基本的には夫婦で半分ずつ分けることになります。別居期間中に夫が散財して預貯金の金額が激減していたとしても、基本的には別居時に存在していた金額で財産分与を判断することになります。
他方で、婚姻前から蓄財していた現金や預貯金については、夫婦で協力して形成した財産とはいえないため、財産分与の対象とはなりません。
株式や有価証券についても別居時に保有していた有価証券については財産分与の対象となりますが、別居後に夫婦の一方が取得した有価証券については基本的に財産分与の対象とはなりません。婚姻前から保有していた場合も同様です。 -
(3)生命保険や学資保険
婚姻中に将来に備えて生命保険や学資保険に加入していた場合、解約返戻金が発生するものについては財産分与の対象となります。
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(4)退職金や年金
退職金については、給料の後払い的な性質があると考えられているため、給料と同様に財産分与の対象となります。しかし、離婚時から退職までは長期間がある場合には、確実に退職金が支払われるという保証はありません。そのため、退職金が財産分与の対象となるのは、退職金の支給がほぼ確実であると見込まれている場合に限られます。そして、対象になるとしてもその範囲は、婚姻期間中に築いた部分に限定されます。
また、年金についても年金分割により分けることができます。年金分割とは、厚生年金保険について婚姻期間中の年金保険料の納付実績を分割することで他方配偶者が年金を受け取れるようにする制度です。 -
(5)自動車や家具家電などの動産
婚姻中に取得した自動車や家具家電などの動産についても、夫婦共有財産と評価できるものは財産分与の対象となります。
ただし、婚姻前から保有していたものや、婚姻中であっても相続等により取得したものについては財産分与の対象とはなりません。
3、財産分与の評価基準
財産分与の対象となった財産について「いつの時点で価値を評価するのか」という点について解説していきます。
財産分与の評価の基準時は、財産を分ける時(分割時・離婚時)であると考えられています。
したがって、財産分与の対象は「別居時」を基準に判断されますが、その財産の価値については「分割時・離婚時」を基準に評価することになります。
具体的には、現金であれば評価が変動することはありませんが、土地や家などの不動産は市場に左右されやすいため、どのタイミングを軸に評価するかは重要なポイントになります。
4、別居後の財産分与における注意点
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(1)相手の財産に関する情報は調べておく
適切に財産分与を行うためには、財産分与の対象となる財産を把握しておく必要があります。中には、離婚する相手に財産を渡したくないことから、相手方が現金・預貯金を隠してしまう場合もあります。
したがって、別居する際には、同居している間にある程度相手の財産に関する情報は調べておくようにしましょう。 -
(2)財産の価値は専門家に評価してもらう
財産の評価については以下のような専門家に行ってもらうことも、適切に財産分与を行うためには重要です。
- 不動産評価額:不動産会社・不動産鑑定士
- 株式、投資信託など:証券会社
なお、夫婦の財産の把握や分与の対象となる財産を知りたいという場合は、弁護士に相談・依頼してください。弁護士に財産分与事件を依頼しておけば、財産分与の対象となる財産の見極めや請求などの各手続きを一任することができます。
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(3)支払えない財産分与を分割払いにする場合は公正証書で合意する
相手が一括で分与財産の支払いができない場合には、分割払いとすることがあります。しかし、そのような場合には将来的に支払いが滞るおそれがあります。
そこで、財産分与について公正証書で合意しておくことがおすすめです。公正証書を作成しておくことで、将来支払いが止まってしまった際、裁判を行わずに強制執行することが可能になります。ただし、そのような公正証書を作成するためには条件があるため、弁護士に依頼して作成してもらうことがおすすめです。
お問い合わせください。
5、まとめ
以上いかがだったでしょうか。財産分与の対象となる財産は原則として別居した時点の財産であり、財産の評価における基準時は分割時・離婚時となります。
離婚する場合には、財産分与のほかにもさまざまな取り決めを行う必要があります。スムーズに離婚手続きを進める場合には、弁護士に相談することがおすすめです。ベリーベスト法律事務所 成田オフィスには離婚事件の解決実績がある弁護士が在籍しておりますので、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています