相続手続きはいつまで? 手続き別の期限と期限を過ぎるリスク
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千葉県の2022年の統計によると、成田市内だけで1246名の方が亡くなっています。故人(被相続人)に相続すべき財産があった場合、できるだけ早く相続の手続きを開始することが重要です。
なぜなら、相続手続きには期間の制限があるものも多く、期限を過ぎてしまうと、延滞税が発生したり、控除や特例制度が利用できなくなったりとさまざまな不利益を受ける可能性があるからです。
今回は、相続手続きの期限や各種内容について、ベリーベスト法律事務所 成田オフィスの弁護士が解説します。
1、相続手続きはいつまで? 手続き別の期限
相続の手続きには、期限が決まっているものが少なくありません。以下の各種手続きの期限と内容について、しっかり確認しておきましょう。
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(1)相続放棄|3か月以内
相続人になった場合、財産を相続する「単純承認」、相続を放棄する「相続放棄」、一部の財産のみを相続する「限定承認」の3つのいずれかを選択しなければなりません。このうち、「相続放棄」は、相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。
相続放棄をせず、3か月が経過してしまうと、単純承認したものとみなされます。そうすると、借金があり、相続すると損してしまう状況だったのに相続放棄できず、相続しなければならない状況に陥ります。
相続放棄をする場合には、家庭裁判所に書面の提出が必要です。そのため、自分が相続人になったらすぐに準備を始めましょう。 -
(2)準確定申告|4か月以内
準確定申告とは、相続人が被相続人の代わりにその年の所得税の確定申告を行う手続きをいいます。確定申告が必要な人が亡くなった場合には、相続人がこの準確定申告をしなければなりません。準確定申告にも期間の制限があり、相続開始を知った日から4か月以内に税務署に申告と納税をしなければなりません。
もっとも、被相続人に確定申告が必要なければ、この手続きを行う必要はありません。 -
(3)相続税の申告|10か月以内
遺産を相続し、法律で定める一定金額を超える場合には、相続開始を知った日から10か月以内に相続税の申告が必要です。また、申告だけでなく、相続額に応じた納税も行う必要があります。
10か月以内に相続税の申告・納税を行わない場合には、延滞税が発生したり、無申告加算税が発生したりします。また、税金の控除などの軽減制度も利用できなくなるため、必ず10か月以内に手続きをしましょう。
相続税の計算は、相続財産の調査等も必要になり、個人で行うのはかなり難しい手続きです。そのため、早めに税理士や弁護士などに相談することをおすすめします。 -
(4)遺留分侵害額請求|1年以内
遺留分侵害額請求とは、相続人に対して最低限の相続権を保障する制度のことをいいます(2019年の民法改正までは「遺留分減殺請求」)。
たとえば、遺言により特定の相続人だけが遺産を相続するような場合、ほかの相続人は遺産をもらえなくなってしまいます。そのような不平等が起こらないように、最低限度の相続分(遺留分)にあたる金銭を請求する権利を認めています。
遺留分侵害額請求は、相続開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った日から1年以内に行わなければなりません。また、遺留分が侵害されていることを知らなかったとしても、相続開始から10年が経過すると時効が成立し、請求ができなくなります。 -
(5)相続登記|3年以内
相続登記は、相続開始から3年以内に行う必要があります。相続登記とは、故人(被相続人)の家や土地など、不動産の名義を相続人の名義に変更する手続きです。
相続登記は2024年4月1日から義務化されました。そのため、3年を過ぎてしまうと10万円以下の罰金(過料)となります。土地や建物などの不動産を相続した場合には、相続登記もあわせて忘れず行いましょう。 -
(6)相続税の還付請求|5年10か月以内
相続税の申告と納税をする際に、遺産分割が終わっておらず、見込みでの相続税の申告・納税をするケースがあります。その場合には、払いすぎてしまった税金の還付を受けることができます。
この相続税の還付請求にも期限の制限があり、相続税の申告期限から5年以内と定められています。そのため、相続税の申告期間である10か月と5年間を合わせて5年と10か月以内に還付請求をしなければなりません。
本来の税額より多く払ったのにそのままにすると、税金の還付を受けられず、損してしまう可能性があります。遺産分割が終わらず、相続税の申告ができない場合や見込みで払った後も遺産分割で揉めている場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
2、死亡後、相続以外で必要な手続きの期限
故人が死亡した後には、相続以外にも必要な手続きがあります。相続の手続き同様、期限が設けられている手続きもあるため、合わせて確認しておきましょう。
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(1)死亡届の提出|7日以内
死亡の事実を知ってから7日以内に必ず死亡届の提出が必要です。死亡届は、市区町村に提出します。死亡届は、死亡診断書とセットになっているため、まずは死亡診断書を受け取り、その後、死亡届の作成・提出という流れになります。
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(2)社会保険や年金に関する手続き|14日以内
国民年金を受給している場合には、死亡後14日以内に手続きが必要です。
14日を過ぎても手続きをせず、年金を受け取ってしまうと不正受給になります。そうすると、年金事務所から返還請求が来て、振り込まれた年金の返還手続きをしなければなりません。
そのため、不要な手続きを増やさないためにも14日以内の手続きが必須です。 -
(3)生命保険や損害保険の手続き|3年以内
生命保険などの死亡保険金の請求は、3年以内に行うことをおすすめします。
生命保険の請求は、各保険会社によって請求期限が異なりますが、3年を過ぎると保険法における消滅時効にかかり、請求する権利が失われてしまう可能性があります。また、死亡保険金は、今後の生活費にもなり得る大切なお金であり、少しでも早く受け取っておけば、当面安心して暮らすことができるでしょう。
一般的に、請求してから1週間~10日前後で支給されるようです。請求期限や受け取り方法については、なるべく早めに保険会社に問い合わせましょう。
3、期限が定められていない相続手続き
相続手続きの中には期限が定められていない手続きもあります。しかし、いつまでも手続きを進めないと思わぬ不利益を受けることがあります。
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(1)遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人間で誰がどの遺産をどのくらいの割合で相続するか、話し合うことです。遺産分割協議の結果、全員が同意すれば遺産分割が完了します。
遺産分割協議には期間制限がありません。しかし、遺産分割をしなければ、遺産相続前の相続財産は、相続人全員のもの、つまり共有状態のままになります。共有状態では、相続財産の土地を売りたいと思っても、勝手には売ることができません。
そのため、遺産を有効活用するためにも、相続開始後は早めに遺産分割協議の話し合いを始めることをおすすめします。 -
(2)遺言書の検認
遺言書の検認とは、遺言書の偽造や変造を防止する手続きのことをいいます。遺言書が発見された場合、そのままにしておくと書き換えられてしまったり、そもそも本物の遺言書なのかわからなくなったりすることがあります。
そこで、検認という手続きをすることによって、相続人に対して遺言の存在と内容を告知し、内容を明確化し、偽造や変造を防止します。この遺言書の検認という手続きは、裁判所で行わなければなりません。
検認自体には期間の制限はありませんが、検認の手続きをしなければ遺産分割を進めることができません。したがって、相続税の申告や相続登記などの期間の制限がある手続きにも悪影響を及ぼします。
4、相続手続きでお困りの方は弁護士への依頼がおすすめ
相続手続きは、種類も多く個人ですべて行うには難しい手続きもあります。そこで、相続手続きを弁護士に依頼するメリットについて紹介します。
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(1)期限に遅れることなく手続きを済ませられる
弁護士に相続手続きを依頼することで期限に遅れることなく、スムーズに手続きを済ませることができます。
たとえば、相続放棄するか迷っている場合にもどのような選択をするのが最適なのかアドバイスをもらえるため、適切な判断の上で、書類を作成や家庭裁判所への提出を進めることができます。
また、2024年4月1日より義務化された相続登記など、忘れがちな手続きも弁護士が漏れなく一任することができます。 -
(2)必要書類の収集も任せられる
相続の手続きをする場合には、必要書類を期限前までに収集する必要があります。
たとえば、誰が相続人なのかわからない場合、戸籍謄本などを取り寄せ、相続人を確定しなければなりません。また、不動産や動産、預金口座、株式などさまざまな遺産がある場合には、相続登記や名義変更のためにさまざまなところへ連絡し、書類を集める必要があります。
弁護士であれば、どのように収集したら良いかアドバイスすることができ、書類によっては収集を任せることもできます。 -
(3)トラブルが発生した場合に速やかに対処してもらえる
相続において、相続人間のトラブルが発生した場合に対処できるのは弁護士だけです。
たとえば、遺産分割協議がうまくいかず、遺産争いが起こってしまった場合、他の相続人と交渉したり、ときには調停や審判といった法的な手続きをサポートしたりできるのは弁護士だけです。
また、弁護士であれば、相続人間のトラブルを未然に回避できることもあります。たとえば、相続人だけで話し合いを進め、今まで他の兄弟姉妹だけが優遇されていたことなどで不満が出て、話し合いが進まなくなってしまうケースがあります。そのような場合、弁護士は法律家としての視点から平等な遺産分割方法を提案し、相続手続きを円滑に進められるようサポートすることができます。
5、まとめ
多くの相続手続きには期間の制限があり、期限までに完了しないと、延滞税が発生したり、相続放棄したくてもできなくなったりするおそれがあります。また、期間制限がなくとも、手続きをせず放置していると、遺産をいつまでも活用できません。
まずは、必要な手続きの内容と期間をしっかりと把握し、順番に手続きを進めていくことが肝心です。自分だけでは手続きが不安な場合、弁護士に相談してみましょう。
ベリーベスト法律事務所 成田オフィスでは、遺産相続の解決実績がある弁護士が相続手続きのサポートをいたします。また、所属の税理士と連携し、一気通貫で税金に関するご相談も承ることが可能です。遺産相続でのお悩みや、期限が過ぎそうでお困りの場合は、まずは当事務所まで、お気軽にご相談ください。
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